構造主義って当時すごかったんだなー | 「はじめての構造主義」読了
遅くなりました。違うエントリーです。
現在、マクルーハン「グーテンベルクの銀河系」を読んでいるのですが、その周辺知識をおさらいするためにこの本を通勤中などに読んでいました。エンハンスとなったので、目的は達成できたかな。
「これからはメディアについて学びたい!」と、本当に0からスタートしている自分にとって、本当に心強い本でした。
その覚悟を決める前、去年ぐらいの話だけど、別の本で「寝ながら学べる構造主義」も読んだんだけど、アマゾンレビュー通り、こちらの方が先に読むべき入門用書籍に感じました。「寝ながら…」が構造主義の入り口までの案内だったのに対して、こちらの本はその入り口からスタートします。その証拠として、お互いにカバーしている知識人・哲学者が違う中、この本は構造主義の中心人物となる人類学者・レヴィ=ストロースの話が6−7割を占めています。
レビューをサクッと書きます。
よく分かっていなかった部分
今まで、この年代の哲学・思想において、あまり良く分かっていなかったのが言語の恣意性。物分りの悪い僕でも、丁寧な説明のおかげで理解できるようになりました。
「グーテンベルクの銀河系」でも、アルファベットの最大の発明は、発音に対して全く関係のない記号を割り当てたこと、と書いてあったはず。そこから更にこの本では、言語哲学者・ソシュールの分かりやすい説明も付加されていたので、構えずに読むことができました。
加えて、そのようなテキスト至上主義に立っていたヨーロッパ史に、構造主義が与えたインパクトが生々しく伝わったのが印象的でした。というか、そんなすごいことになってたなんて想像もしてなかった。
構造主義は60年代以降の考え方で、比較して部族的といえるアジア人の台頭がたしかに目覚ましかったと思うけど、その裏にあるヨーロッパ各国の人々が感じていた衰退(中心となるフランス人の感じ方が分からないのは勉強不足だけど、イギリス人がそう思っていたのは他の本で読んだことある)の一つの要因は構造主義だったのか…と納得。
女性の交換から、テキスト破壊まで
「寝ながら…」が、最後あたりにインセスト・タブー(近親相姦のタブー化)にようやく触れて、はい終わり!って感じだったはず。
この本ではインセスト・タブーから本格的な講義がスタートします。深く分かりやすく説明してくださったおかげで、全然知らなかった知識にも触れられて満足。そのような背景から、いわゆるアフリカの部族のような未開社会が、「社会の根源的な姿」であることを説いています。
ソシュールの親族研究から転じて、近代的な神話学が、新しい神話の解析手法を手に入れたことによって花開き、構造主義が社会に、世界にとって無視できない存在へと成長していきます。
この時、注目すべきはやはり、その神話学の手法。
未開社会の部族によって、伝わっている神話の構成が"似たようでバラバラ"であったのが「彼らの考え方が未熟だから…」といってヨーロッパ人が片付けていたのに対して、(後に神話学に転倒した)ストロースは神話のテキストを破壊し、文脈における要素を並び替えて、どのような共通的かつ普遍的演算によってストーリーという出力結果が同じになるのかを発見するスタイルを取ったそう。
これが先程のヨーロッパにおけるショックの発端となった手法だそうで、それまで聖書、果てには当時のマルクス主義者のバイブル「資本論」のような固定されたテキスト(本では「啓示による真理」といっている)が神格化されていたことに対する攻撃であったわけです。
なるほど、見えるモノが真実でなく、ましてやその対象を視る主体が絶対なわけでもなく、そのような主体−客体関係を超えた「無意識的・集合的な現象・概念」こそが真理かもしれない、というのが盲目なヨーロッパ人を脅かしたのだといえます。
数学、美術も関与している
あまりブログに時間をかけたくないのですが、これ以降にもある楽しいパートを飛ばすのは大変忍びないので、簡単に触れておくと、これ以外には数学的な考え、そしてそれに対応するかのような美術史における展開も踏まえています。
美術はいつの時代も、人がどのような見え方をしているのかを説明してきたわけですが、ルネサンス以降ではユークリッド幾何学の影響、そしてもちろん活字時代を歩みだしたヨーロッパ人が絵画にリアリティを求めだしたところから遠近法が生まれたことを、これまた分かりやすく書いています。
ただそれも19世紀以降、非ユークリッド幾何学の登場、ニュートン時代からの知識を一新したアインシュタインの各法則の発見によって、美術史もまたそれに対応して変化を余儀なくされました。非ユークリッド幾何学のように、「計算された直線でなく、曲線を使ってもいい」という一種の許しが当時の美術にあったように読んでいて感じました。
美術の知識をさらに突き詰めたいと思う宛ら、数学も勉強しないと駄目だな、と落胆する僕でした。勉強すること多すぎ…。
とりあえず、次に読む本は構造主義から前後している時代の本で良さそう。
著者の方は、後のポスト構造主義に走らず、是非その前のモダニズム時代あたりについて読んでください、みたいなことを言っていたので、自分もそれでいいかなーと思っています。楽しみ!