貧困は美談じゃないよね?「弱者の居場所がない社会」読了
AmazonのCAPTCHAが不完全なので、自分の写メを使うことにした。 これだけの画像でも、あるとないとじゃ写り映えが違うよね。
本に関しては、全然情報系でない物も読んでいく予定です。 で、今回はこの本。
貧困にも種類がある
社会の構造を読み解くのにサクッと読める新書として購入。
新書として、テーマに深く入り込まずに体系的に整理されていてとても読みやすい。震災直後を背景に、貧困の種類を統計と共に紹介している。
著者のポイントとしては、
- 社会の弱者に対する社会的排除と社会的包摂という手段
- 貧困には絶対的貧困と相対的貧困がある
- 国による貧困の定義は、それこそ国によって様々である
- 貧困に対する日本人の考え
- 格差とは、そして格差の測り方とは
- 社会の人々に対する評価と承認
こんなところ。上記の箇条書きが上手くまとまっているのは、私が本の要約が上手いからではなく、それだけ本が分かりやすいから。
スタンスとしても、精神的貧困にはあまり立ち入らず、それ以前の問題としてある経済的貧困と、その種の貧困と社会との両者の関係を描いている。その上でどのような社会が理想であるかを最後に提示している。
データとしても、最初のほうで「日本の相対的貧困率は16%である」と打ち出し、そこからその文句の意味をどんどん分かるように説明している。
特に、貧困に陥った・陥ってしまった後の孤立の姿があったけど、まあやっぱり人付き合いって大事よね。今の自分はあまり人と会っていないんだけど、人生どうなるか分からないもんね。何にコストをかけるのか、かけないのかというビジネスライクな考え方もできるだろうけど、多くの人にとって大事な資本は人間関係なのだと客観的に見れました。
その貧困、本当に自己責任でないのか?
著者の方が貧困を研究されている方で、活動の一環としてホームレスの方たちともお会いされているそうで、その体験談なんかも載っていました。
彼らがかつて社会・会社で働いてた時に、その個性、存在を"評価"されず、社会的排除に見舞われたケースなんかもあった。これは現在会社にいて働きづらい、生きづらいと感じている人なんかも思うことがありそうだよね。
ただ、例の一つにこういうのがあって、ホームレスが体調不良で寝込み始めて、いよいよ先が長くないと分かった時にようやくホームレスの家族一同が集まったのだが、その時にその方がホームレスになった経緯が書かれている。
家は弟が継ぎ、彼は一人で東京に出て働くようになったものの、いざ仕事を失い、お土産の一つも買うことできなくなって、故郷に帰ることができなくなってしまったのであろう。路上の生活者は、このような人が多い。故郷に帰るときには、それこそ「綿を飾って」、甥や姪への土産の一つや二つかかえてでないと帰れないのである。[p116]
って、本当に言ってるの?親戚の目線が痛いのは理解できるけど、別に気にしないで帰郷して、家族に助けを求めることができたはずだよね?(時代が時代ってのは分かるけど)
ってか、お土産買えるかどうかって、貧困に困ることと比べたらどうでもいいような…。※自分の考え方としてはね
この本、いかに社会が個を承認し、包摂することが大事かを説いているわけだけど、かといって全ての貧困が構造的な部分に引っ張られていないと思う。
様々なものの境界にあると思われる自己承認
自分がブログを書き始める前に、一時期アダルトチルドレンの本を読んでいたのもあるけど(名著「毒になる親」とか)、他人からの承認よりも前に自己承認があると思っていて、
この本では他者からの承認を包摂の手段としてあげているが、まずはありのまま自分を認めてあげるからこそ、自分の幸せを追求できることができるはず。だからこそ自分のために、他人に助けを求められるわけだろう。物事には順序があるはず。
上記の例も、仕事を失った自分を何よりもホームレス自身が嫌っていた節は否定できない。だから自意識が発生する。
人間誰しも強くないから、自我を守ろうと奔走してしまうことはあるだろうが、国の制度や補助の仕組みが洗練され始めた今だからこそ、自分に素直になって、見栄をはらないことが重要なのではないだろうか。
それでも災害があった時なんかにどうしても貧困は訪れるわけで、セーフティネットとしての日本の公的扶助もまだまだ発達できるはず。アダルトチルドレン云々とは程遠いところには天災であったり、経済的な事情の急な悪化、不幸な事故・事件は必ずある。それでもまずは貧困の境界線として自己承認があるであろう、というのは私の見解です。
ちなみに自分は、会社なんかで働いていても「本来は上司であろうと後輩であろうと対等なはずだから」と思って、(当然TPOを弁えた形で)思ったことを素直に発言することで、自己を大切にしてあげられるような実践をしています。
やっぱり社会構造の問題もあると思うけど、自分が興味があるのは個人単位での、もっと心理的な構造だなーとちょっと思った。その時に個に影響を与える社会なんかもテーマとして読み解きたいけどね。
でもこの本は読みやすくて好きでした。サクッと読めるよ。